社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)とは、ある特定の状況などで緊張感が高まった事により、不安や恐怖を感じ、次第にそのような場面を避けるようになる病気です。特に、子どもの頃そういった経験をした方は多いと思います。
こういった事は誰にでもあり得るものですが、成長して大人になり、経験を積むにつれて自然に振る舞えるようになります。
しかし、社会不安障害の場合は不安や緊張感が強まり、様々な症状が現れることによって日常生活に支障をきたしてしまいます。
ここでは、社会不安障害について解説します。
どのくらいの人が社会不安障害で苦しんでいるか?
どのくらいの人が社会不安障害で苦しんでいるのでしょうか?日本では現在約300万人以上いると言われています。
割合にして日本人の約2.4%であり、年齢としては、10代半ば~20代前半が多いです。
性格的なものと考えられ、病気という認識がされることが少ないので、周りからの理解も少ないケースが多いです。
一人で悩んでいるケースもあるので、先ほどの300万人よりも実際の数は多いのではと考えられます。
実際にアメリカでの研究でも、10%を超える報告がなされています。なので決して珍しいというほどではなく、ごく身近にある病気と言えます。
社会不安障害はうつ病などの引き金になる恐れもあるので、思い当たることがあれば早めに受診することも大切です。
社会不安障害の症状
緊張などにより以下の症状がおこったりします。
- 発汗
- 手足の震え
- 「周囲に変に思われたり、不審に思われているのでは」という不安や恐怖感
一度きりで終われば良いですが、何度も繰り返されることで、また現れるのではないかという気持ちになります(予期不安)。
そして、それが引き起こされる状況や行為を避けるようになります(回避行動)。
具体的には、以下のような症状があげられます。
- 対人恐怖症
周囲の視線が気になったり、他人の評価を過度に気にする。
人前で緊張感が高まり、顔が赤くなる。(赤面恐怖)
自分の体臭が気になる(体臭恐怖) - 場面恐怖症
人前で緊張して声が震えるなどして上手く話せない
なぜSADになるのか?(社会不安障害の原因)
発症の原因はまだはっきりとは解明されていない部分も多いです。
脳内の神経伝達物質のバランスが乱れ、恐怖や不安に対して脳が過剰に反応しているためとも言われています。
他にも、経験的に人前で恥ずかしい思いをした事により社会不安障害の引き金になったという報告もあります。
複合的な要因が重なって起きていると考えられるため、一概に原因を特定するのは難しいでしょう。
ただ、原因を特定する事で解決の糸口が見つかるかもしれません。ですが、自分自身で特定するのは難しい時もあるでしょう。
だからこそ、一人で悩まず相談できる人に相談する、医療機関の受診により解決の糸口を見つける事が大切だと言えます。
どのような治療を行うのか?
主に社会不安障害の治療は、「薬物療法」と「認知行動療法」を中心に行われます。
両方を併用すると治療効果が高いといわれています。
使うお薬は、気持ちを落ち着かせる薬や緊張を和らげる薬、社会不安障害の症状のために眠れないなどがあれば睡眠薬などを服用します。
薬だけで解決するわけではなく時間がかかるので、症状が改善しても、再発を予防するためにしばらくは服薬を続けることになります。
自己判断で服用を中止せず、医師・薬剤師とよく相談する事が大切です。
薬以外に、不安や恐怖にとらわれている原因になっている物事に対する考え方や捉え方を変えたり(認知行動療法)することを行う場合もあります。
他にも以下のような方法があります。
- 周囲の人の自分に対する見方
- あえて不安や恐怖を感じる状況にすることで少しずつ慣れさせる
- 呼吸法やリラクゼーションの方法を学ぶ
このような事は他にもいろいろあり、服薬以外にも様々な方法がとられます。
日常生活の改善や家族の方のサポートも大切
日常生活の改善が必要な時もあります。
睡眠時間や食事内容の改善、運動などの日常生活のアドバイスにより改善に結びつける場合もあります。
加えて、家族の方や職場の方などのサポートも大切です。
患者様ご自身の心の負担を軽減し、早めに受診できるようにサポートする事はもちろん、気持ちによりそい、共感や声掛けなども重要です。
周りの支えも、社会不安障害を抱えている患者様の治療にとっては非常に重要と言えます。
一人で悩まず早めの受診をおすすめします。
人生の中で抱える悩みや不安は、色々と経験、学ぶ事で自分自身で解決できるケースもあるでしょう。
ですが、本人の力だけでは解決できない事もあります。
「社会不安障害」という言葉だけでは重大な病気のように思えるかもしれませんが、そうではなく、誰にでも起きうるものです。
もし、自分だけではどうする事も出来ない、周りからの理解がない、相談できる人がいないなどがあれば一度ぜひご相談ください。
患者様一人ひとりに合った方法をご提案させていただきます。