人間の三大欲求のひとつである、睡眠。
一生の三分の一を占める睡眠ですが、その睡眠に支障が出ると多くの人はストレスを感じます。
ですが、眠れない日や途中で目が覚めてしまう日はどんな人でも当然ありますし、暑い、寒いなどの季節や天候などでも大きく左右します。
一体どこからが病院に受診すべきかなどの基準をはじめ、「睡眠障害」と呼ばれるものにはどのような症状があるのかなどを紹介します。
睡眠障害の診断基準
どこからが睡眠障害で病院を受診すべきかという基準は患者様によって様々ですので、一概に言えない部分はあります。
ですが、「アテネ不眠尺度」というもので客観的に不眠度を測定できます。
これは世界保険機関(WHO)が中心になって設立した「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した世界共通の不眠症判定法です。
具体的な方法は、8つの質問に対する回答を最大24点で数値化し、不眠度を測ります。
過去1ヶ月間に、少なくとも週3回以上経験したものに当てはまるものにチェックし、選択肢それぞれにつけられた点数の合計で結果が診断されます。
アテネ不眠尺度で睡眠の質をチェック
先ほど紹介した、アテネ不眠尺度で具体的にあなたの睡眠の質をチェックしてみましょう。
以下はアテネ不眠尺度を元に作成したもので、質問内容に一つずつチェックして、総合点数を出してみてください。
左側の0〜3の数字が点数で、その合計を出します。最大24点となります。
1:いつもより少し時間がかかった
2:いつもよりかなり時間がかかった
3:いつもより非常に時間がかかったか、全く眠れなかった
B. 睡眠途中に目が覚めることはありますか?
0:特になし、問題になるようなことはなかった
1:たまにある、少し困ることがあった
2:よくあり、かなり困っている
3:頻繁にある。それから全く眠れなかった
C. 起きたい時間より早く目覚め、そこから眠れましたか?
0:そのようなことはなかった
1:少し早い
2:かなり早い
3:非常に早かったか、それ以降全く眠れなかった
D. 睡眠時間は足りていると感じますか?
0:十分、足りている
1:少し足りないと感じる
2:かなり足りないと感じる
3:全く足りないか、全く眠れなかった
E. 全体的な睡眠の質はどうですか?
0:満足している
1:少し不満
2:かなり不満
3:非常に不満か、全く眠れない
F. 日中の気分はどうですか?
0:いつも通り、特に問題ない
1:少しつらい
2:かなりつらい
3:非常につらく、日常生活に支障があるくらい
G. 日常生活の状況はどうですか?
(身体的なことだけでなく、精神的な状況も含みます)
0:いつも通り
1:少し悪くなっていると感じる
2:かなり悪くなっていると感じる
3:非常に状況が悪くつらい
H. 日中に眠気はありますか?
0:全くない
1:少しある
2:かなりある
3:激しい
いかがでしたでしょうか?
点数の基準は以下の通りです。
1~3点:問題なし
4~5点:不眠症の疑いあり
6点以上:不眠症の可能性が高い
ただ、注意していただきたいのは、これだけで確定的に診断はできません。
質問内容が曖昧な部分もありますし、睡眠時間も短くて大丈夫な人もいれば長く必要な人もいます。
ご自分の希望よりも早く目が覚めてしまう症状も、どのくらいを早いととるかは人によっても異なるので、早いからと言って一概に睡眠障害とは言えません。
(一般的な基準は後ほど紹介します)
例えば、痛みに対しての耐性も、同じ力を加えても感じる痛みの程度が異なるように睡眠も同じ事が言えます。
あくまで参考程度にして、あなた自身の睡眠の程度を知る参考にしていただきたいのですが、もし点数が高い場合は早めの受診をお勧めします。
睡眠障害の4つのタイプ
睡眠障害には大きく分けて4つのタイプがあります。
先ほどのアテネ不眠尺度でも、仮に2人の患者様が同じ点数だったとしても、点数の内訳をみると大きく異なる事があります。
その場合、診断や処方するお薬も異なります。
そこでここでは睡眠障害のタイプについて紹介します。
1、入眠障害
床についてもなかなか寝付けない、眠るまで30分〜1時間以上かかる状態です。
睡眠障害の訴えで最も多く、年齢性別問わず起こりやすい症状です。
2、中途覚醒(ちゅうとかくせい)
睡眠中に何度も目が覚めたり、目覚めてから寝付けない状態です。
日本人の不眠の症状で最も多く、特に眠りの浅くなる中高年以上に多く見られる症状です。
3、早朝覚醒
自分の望む起床時間よりも2時間以上早く目が覚めてしまう状態です。
中には30分くらいでも苦痛に感じる人もいるでしょうから、一括りにはできないかもしれませんが、一般的には2時間を基準に定義しています。
早寝早起きになりがちな高齢者によく見られ、早朝覚醒の場合はうつ病が潜んでいる可能性もあります。
4、熟眠障害
「睡眠障害」というと、「眠れていない」と思われがちですが、十分な時間寝ているのにもかかわらず、眠った感じがしない状態も睡眠障害です。
これは眠りが浅いためで、睡眠時間は十分にとっても睡眠の質が悪いので日中起きているのが辛いなどといった症状があります。
これは、以下のような疾患の症状による可能性もあります。
- 睡眠時無呼吸症候群:
睡眠時の呼吸の状態が悪いため、睡眠の質が低下する - むずむず脚症候群:
眠ろうとすると足がムズムズして眠れなくなる症状。 - 周期性四肢運動:
むずむず脚症候群の半数以上が合併する症状で、睡眠時に足がピクンとする症状が起こり、これも睡眠障害の原因になります。
これらの場合は、睡眠の質よりも、その症状の改善を行う必要があります。
あなたはどのタイプ?
どれか当てはまる症状があったでしょうか。複数当てはまった方もいるはずです。
睡眠の質は、枕などの寝具や室内環境、家庭環境、仕事環境や人間関係でも大きく変化します。
色々な要因が絡み合って、原因を特定するのは非常に難しいケースもあるので、睡眠でお悩みなら一度ご相談ください。
睡眠障害は併発症状かもしれません
熟眠障害の部分でも触れましたが、何かしらの病気によって睡眠障害が引き起こされているかもしれません。
睡眠障害を併発しうる病気は以下のようなものがあります。
- うつ病
- 不安障害
- 統合失調症
- アルツハイマー型認知症
- 脳血管障害や脳腫瘍
- 生活習慣病
- 呼吸器疾患
他にも痛みやかゆみ、夜間頻尿、風邪による発熱や咳などでも睡眠が障害されます。
あとは仕事や人間関係の過度なストレスにより睡眠障害になってしまうケースもあるので、原因はひとつではなく色々な要因で起こります。
病気が関係していなくても、治療に必要な薬剤によっても不眠が引きおこされるケースもあるので、原因を探るには色々な方向性から見ていかなければいけません。
睡眠障害で悩んでいるのはあなただけではありません
睡眠の調査の報告によると、以下のような割合で睡眠に関しての悩みがあるようです。
- 20人に1人:睡眠薬を服用している
- 10人に1人:長期間の不眠に悩む
- 5人に1人:不眠に悩む
- 3人に1人:過去に不眠で悩んでいた
これは統計上の数字ではありますが、思ったより多くの人が睡眠障害で悩んでいる事がわかる報告です。
一般成人の約21%が不眠に悩んでいる調査結果もあり、睡眠障害は人ごとではありません。
ここまで、自己判断法や定義など色々と説明しましたが、つまるところ、
『「満足のいく睡眠が取れなかった、眠れない感じがして困っている」状態』
であるなら睡眠障害という事ができるでしょう。
家の人に相談して「それはただの気のせい」「たまたまだよ」と言われても、長い期間生活に支障がきたすくらいの状態であれば一度受診し相談されることをお勧めします。
不眠症などの睡眠障害と見なすには他にも色々な基準があり、それに基づいて判断する部分もありますので、患者様一人ひとりによって診断は異なりますが、まずは一度お気軽にご相談ください。