ここではうつ病について紹介します。
地域や年齢層、性別によっても異なりますが、一生涯でうつ病になる人の割合は15人に1人とも言われ、
医療機関に受診している患者さんの数も100万人を超えています。
うつ病は「現代病」といっても良いくらいで、「自分はならない」なんて言っていられなくなった病気であると言えるでしょう。
そもそも「うつ病」とは?
うつ病とは、気分に関する病気(気分障害)の一種です。
もう少しわかりやすく言うと、脳が電池切れになってしまった状態と言えるでしょう。
通常なら、休養などで充電される脳の電池が、休養などでも充電されず日常生活に支障が出てしまう状態です。
日常生きている上でストレスや疲労はつきもので、
それにより気力が減ったりするのは当たり前の事で、通常なら休養などで回復できます。
ですが、うつ病の状態では、休養などでは対処できずに気力がすり減ってしまいます。
先ほどの電池の例で言うと、充電できない状態と言えます。
うつ病になるきっかけは様々で、特定の原因は今もはっきりしていません。
そのため、原因によってうつ病を分類や定義をするのは非常に困難です。
それだけに、本人や周りがうつ病だと気付かずに、自分を責めたり、
周りが冷たく当たったりなど人間関係に支障が出たりしやすくなります。
「怠けている」と思われがちですが、そうではなく、そのためうつ病の特徴を知っておく事がとても重要です。
うつ病のメカニズムや要因は?
うつ病の原因は人によって様々で、メカニズムや特定の原因もはっきりしていません。
分かっていないだけに以下のような要因があり本当に様々です。
- 入学、就職
- 妊娠、出産
- 子どもの自立
- 引っ越し
- 離婚、家族との死別
- 虐待や暴力などトラウマになる事
- 災害や事故
- 責任感が強い、神経質など性格傾向
海外では、経済状況による原因も指摘されているようですが、人によって引き金は様々です。
うつ病の特徴を知る事が早期発見の上で最も重要です
風邪などの病気と同じように、うつ病も早期発見が重要です。
その早期発見をするには、うつ病の症状の特徴を知る事が非常に重要です。
うつ病の症状は、以下のような特徴があります。
- 気分の落ち込み(抑うつ気分)
- 集中力や決断力低下(思考抑制)、動作が遅くなる(行動抑制)
- 意欲、興味、精神活動の低下
- 不安、焦燥(あせり)
- 食欲の低下または増加、体重の増減
- 眠れない、何度も目が覚める
- 自殺願望、希死念慮
それぞれ一つずつ解説します。もし心配な方やご家族や仕事仲間で心配な方がいる場合はひとつずつご覧になってみてください。
1、気分の落ち込み(抑うつ気分)
気持ちが落ち込み、気分が晴れないといった状態です。
以下のような症状が特徴です。
- ゆううつ
- 涙もろくなる
- 言動がネガティブになる
どんな人にも嫌な事やトラブル、悩みなどで一時期に気持ちが落ち込んだりすることもあるでしょう。
人の気分にも、時間帯によって波があるのと同じで、うつ病にも朝方は気分が落ち込んで、午後から症状が良くなるケースもあります。
中には、例えば責任感の強い人の場合、弱い部分などを見せないようにと表面上は元気なふりをし、
はたから見たら非常に分かりにくいケースもあります(仮面うつ病)
そして、病気などによって精神的に悪影響をもたらしたことで起こるケースもあるので、
うつ病かどうかは他の症状やお話を聞くことによって判断されます。
2、集中力や決断力低下(思考抑制)、動作が遅くなる(行動抑制)
頭にもやがかかったような状態になり、集中力や決断力の低下。それにより日常生活、仕事などに支障をきたします。
- いつもできていたことが思うようにできなくなり、小さなミスが増える
- 食事の買い出しで悩み食事の準備ができない、仕事で優先順位を決めて仕事ができない
- 集中力が散漫になり、思ったように仕事ができない
今まで出来ていたことができなくなることへのストレスから焦りや、
特に責任感の強い人の場合、自分から退職、離婚といった事を考えてしまうケースもあります。
目に見えるように行動が遅くなってしまう事もあり
- ロボットのようなぎこちない動き
- 口数が減る、声が小さくなる
- 朝の支度など日常的な動作が遅くなる
といった事があります。
これを行動抑制といい、この症状が強くなると、肉体的にも限界が着ている状態ですので、早い治療が必要です。
3、意欲、興味、精神活動の低下
今まで楽しんでいた趣味や物事が楽しくなくなり、関心などが低下します。
他にも、このような事があります。
- 映画を観ても感動しない
- 精力的に取り組んでいたことが楽しくなくなった
- 普段の生活がつまらなく感じる
もちろん、興味が薄れるなどという事は誰にでもあります。
ただ、その場合は特定の対象に対してですが、うつ病の場合は、人が変わったようになってしまう場合があります。
人と関わるのもおっくうになり、外出の頻度が低下、
次第に自分の殻に閉じこもるようになり、より自分を追い込んでしまうようになります。
4、不安、焦燥(あせり)
先ほど紹介した気分の落ち込みや興味の薄れなどにより、強く不安を感じることで落ち着きなく身体を動かすような事があります。
不安や焦りも誰しもある感情ではありますが、通常とは異なり
「焦ってじっとしていられない」
「何かに追い立てられるような気分になる」
といった事があります。
この不安や焦りは高齢者のうつ病でよく見られる症状のひとつで、診察でも落ち着いて座って話が出来ないといった事があります。
5、食欲の低下または増加、体重の増減
うつ病では食欲の低下、それにより体重が減少します。
食事をしても「何を食べても砂をかんでいるようで食事が苦痛」といった事からさらに食欲が低下します。
食欲の低下から体調が悪化し、日常生活に支障をきたします。
「無理にでも食べなければ」といった気持ちから無理に食べる、逆に過食に走る事で体重が増加するケースもあります。
どちらにせよ、身体的に支障をきたすようになり、精神的だけでなく肉体的にも影響を与えてしまうことになります。
6、眠れない、何度も目が覚める
うつ病では眠りの質が低下します。
もちろん、うつ病ではなく不眠症によるケースもあるので、
睡眠だけでうつ病と断定は出来ませんが、うつ病の患者さんの多くは睡眠に支障をきたします。
睡眠での悩みとしては以下のような事があります。
入眠困難:寝つきが悪い。眠るまで時間がかかる
中途覚醒:何度も目が覚める
早朝覚醒:予定よりも早く目が覚めて、それ以降眠れなくなる
過眠症(過眠障害):逆に睡眠が多いにもかかわらず苦痛で疲労がたまっている状態
このような睡眠の質の低下により体調に支障をきたし、日常生活の質の低下につながります。
それにより、例えば仕事のミス、過眠症の場合なら寝過ごして遅刻をするなどで人間関係のトラブルが起こる事があります。
そのため、自分を追い込み、うつ病の症状に拍車をかける事にもなり得ます。
7、自殺願望、希死念慮
言葉の通り、「死にたい」「この世から消えたい」と思ってしまう状態です。
うつ病で最も気を付けなければいけない状態で、診察を受ける前だけでなく、うつ病治療中で最も注意が必要な症状です。
なぜかというと、薬の服用などで治療が進み、症状が改善されてきても
「死んでしまいたい」という気持ちは常にうつ病の患者さんにはあるからです。
先ほど紹介した、口数が減ったり、動きに支障が出てしまう行動抑制の状態であれば、
自殺する気力すらわかないので自殺の心配はありませんが、治療により改善、
活動的になると「死にたい」という感情のままに行動してしまうケースもあります。
薬の服用を始めて症状が良くなると、自己判断で服用を中止してしまうケースもあり、
それにより自殺を図ってしまうケースもあるので、治療前も治療中も注意が必要な症状と言えます。
うつ病の治療方法
まずは、休養を取る事が最優先です。
主婦などの場合で家事をしている人の場合は、
家事の分担、仕事の場合なら休職、仕事量の軽減など負担を少しでも減らすようにします。
併行して薬での治療を行い、様々ある薬の中から一人ひとりに合った薬を使用します。
その上で、患者さんを支えるご家族への指導なども行います。
この点においても家族との関係や仕事も人それぞれなので、その患者さんに合った指導をしていきます。
思い当たる症状があれば早めに受診を
冒頭でも述べたように、うつ病の原因やきっかけは様々であり、症状も様々です。
ご自身やご家族、職場の方で思い当たる症状がございましたら、お気軽にご相談ください。